14/12/21

 

 
ことばを口にして舌のうえで転がすと、それは熱によって溶けはじめ、冷たい水になった。そうしてすこしずつ飲み込んでいくと、ことばだった水はやがて喉をやわらかく潤し、そしていつのまにか感触を無くした。
目頭がぎゅうっと熱くなる。
すこし視界がぼやける。
おそらく誰もこのうつくしさを視ていない。うつくしいというだけで絶対なのはどうしてなのか。それがいつも苦しい。
夜、と読めば、その向こうに見知らぬいくつかの夜がひろがっていた。どれもが温かくやさしい情景だった。眼を閉じてそこから離れるとき、どこにも存在しない一室で、わたしはあなたの帰りをもうずっと待ち侘びていた。
遠くのほうから掴まれる。
見えるものが取り囲む。
どうして視るものと見えるものに差異があるの。
うつくしいというだけで、それはどこにもない。それなのに感じたものは手放せない。
文字のおく。
言葉のいろ。
口にすれば直に触れるそれ。
有るか無いかはどうやって決めるの。